【感想】最後の講義 大学学長 出口治明

最後の講義という番組が面白かったのでメモ。どれだけ時代が進んでも人間そのものが進化しない限り本から学べることはとてつもなく多いと感じた。これからも歴史からいろいろ学びたい。

以下、視聴メモ。

出口治明は現代の知の巨人。60歳でベンチャー企業を立ち上げたビジネス界の冒険家。日本で初めて独立系ネット生命保険会社を創業。わずか10年で売り上げ100億円を超える企業へ急成長させて金融界にイノベーションを巻き起こした。その後70歳でまた新たな冒険。立命館アジア太平洋大学(APU)の学長に就任。学生のおよそ半数が海外の学生。

もう一つの顔が古今東西の教養を遍く吸収した知識人。様々な歴史書を出版している。そんな出口さんは令和の時代を生き抜く学生たちに何を語るのか。

出口さんは偶然でAPUの学長になっている。日本で唯一学長の国際候補を募って学長を選んだ。公募の条件はドクター(博士号)、英語が堪能、大学の管理運営経験。しかし出口さんはその条件を備えていなかった。応募数は104名ノミネートされていた。受かるわけがないが、面白そうだと思って受けたら選ばれた。

人間のモチベーションは諦めることから生まれる。もう少し丁寧に言えば現状をリアルに受け入れること。
三重県の農村で2人兄弟の長男として生まれた、戦後のベビーブームで育った団塊の世代の1人。成績は良かったものの特にやりたいことは見つからなかった。先輩に潰しが効くからと言われ京大の法学部に1967年入学。当時は学生運動のピークだったので大学が封鎖されていて入れず、今の学生と同じようにステイホームしかできずに自宅で読書をしていた。何になろうかと考えたが、なりたいものがなかったのでせっかく法学部にきたので弁護士になろうと思った。

就活では滑り止めに友人の勧めで生命保険会社を受けた。当時は売り手市場だったから滑り止めで受けたと言ったそう。人事からは「落ちたら引き受けるから勉強を頑張れ」と言われたそう。結果、落ちたので1972年生命保険会社に就職。キャリアの原点は単なる偶然。

学生時代から熱中していることは読書。この日読んでいたのは「KGBの男」。狼の研究をしている人がスパイの親分というのが面白いと語る。読破した本は1万5千冊を超える。多いときには月に40冊も読んでいた。中でも若き日に最も影響を受けたのがダーウィンの「種の起源」だった。

世界中でコロナウィルスがこんなに猖獗(しょうけつ)を極めると想像した人は誰もいませんよね。「何かが起こった時に、強い者や賢い者が生き残るんちゃうで。」と、ダーウィンは言っています。運と適応。運というのは偶然ですよね。何かが起こる、誰かに会う。この時に適応して、アジャストした者だけが生き残るというのがダーウィンの真髄ですよね。だから、僕は人生をそのように考えています。

出口治明


サラリーマン時代海外赴任を経験した。その機会を生かして世界80か国を旅した。訪れた都市は1200を超える。趣味と仕事を両立してサラリーマン人生を謳歌していたが、部長になった時に転換期を迎えた。

当時の社長と意見が対立して子会社に出向になった。暇でぼーっとしていたら友人に誘われて保険会社を立ち上げることにした。偶然です。どうやったらいい人に出会えるか。みんな聞きたいと思うだろうけど、この答えは「そんなものわかったら誰も苦労しない」。だから、いろんな人から学ぼうと思ったらまずは好き嫌いをなくして色んな人と会う。まずはYESと言う。

人間は見たいものしか見ない動物です。なかなか世界をフラットに見ることはできません。僕はいつも世界を見るには3つの方法がある。「縦 横 算数」。縦は人間の脳みそは1万年進化していませんから、昔の人はどう考えたかという歴史。横はすぐ分かりますよね。世界の人がどう考えているか。人間はホモサピエンスという単一種ですから、考えることは一緒ですよね。もう一つは算数です。数字、ファクト、ロジックと言ってもいいかもしれません。どんな問題でもデータでチェックする。エビデンスベースで考えることが大事ですよね。

出口治明


平成の30年間、日本の世界に占めるGDPは9%から4%へと減少した。この30年間になぜ落ちたのか。GAFAと呼ばれる新しい企業やその予備軍とされるユニコーン企業が日本であまり生まれなかったことがその原因だという。男女不平等としての有名な121位ショック。ジェンダーギャップ指数が153か国中121位だった。なぜこれがユニコーンと関係があるのか。これらの成長が著しい企業のほとんどがサービス産業。ユーザーは全世界で見て7割が女性。日本経済を支えていると自負しているのは50-60のおじさん。こうした人々には女性の気持ちがわからない。つまり、需要と供給のミスマッチが起きている。

ヨーロッパはクオータ制という男女平等を実現するため議員など一定数を女性に割り当てる制度を導入した。女性の地位を引き上げようと必死にやっているのは単に男女平等だけではなく、社会の構造が変わったので受給ギャップを埋めなければ豊かな生活ができないから。サービス産業はアイデア勝負。好きなことを徹底的に勉強した人の方がアイデアが出る。日本は大学進学率もOECDの平均よりも7ポイント低い。大学院生はもっと低い。実は日本は大学にあまり行かない国。社会に出ると2000時間労働で帰ったらくたくたで勉強しない。日本人は勉強が嫌いなのではなく、できない。だからGAFAが生まれなかったこと、ひいては日本が低迷している原因は、女性の社会進出の低さ、ダイバーシティ(多様性)がない、勉強する時間がない。この3つ。

学生らからの質問

Q . 日本は比較的GDPが高い方だと思うがもっと高くなる必要があるのか?

(日本国民1人あたりの名目GDPは2018年時点で26位)

A. 日本は世界で一番高齢化が進んでいる
高齢化になったらお金がかかることは分かりますか?介護や医療費がかかる。ということは今の状態が続くだけでは貧しくなる。少なくとも先進地域で比べれば高齢化が一番進んでいないアメリカが3%成長、ヨーロッパが2%、日本が1%成長。相対的に貧しくなることが幸せかというと、歴史を見ると生活水準が徐々に下がっていって良い社会を作ったケースはない。高齢化が進んだ分は取り戻して現状をキープするくらいの成長がなかったら社会の安定は保てないと考える。

Q. 性暴力や虐待に見られる、上の立場の人、権力を持っている側の人ほど加害性を持たないのはなぜか。

A. おそらく2つ解がある。1つは地位が高い人ほど unconscious bias (無意識の偏見)が強い。もう1つは人々の意識は何が作っているのかというと社会構造。
なので実はこれは政策の問題。知識の話に限定されるとどうしても自己責任論の迷路に陥る。DVの問題は貧困や職場のハラスメントなどの構造があった上で家庭内の問題として顕在化しているに過ぎない。根本には男女差別があるとは思うが、そういう社会の構造を変えていかないといけない。

Q. 社会人として腰が重い大人たちをいかに動かすかという課題を抱えています。

A. そういう大人は自然と滅んでいくので放っておけばいい
錯覚で全部を生かさないといけないと勘違いしがちだが、ゾンビ企業(経営は破綻状態なのに銀行や行政の支援で存続している企業)を生かそうとすればするほど、社会の活力は失われる。自然界というのは死んで生まれて良くなっていく。社会も一緒でゾンビ企業はどんどん潰れないと新しい企業が生まれない。ポイントは部分最適と全体最適の問題。ビジネスをやっていたら部分最適も理解できるが、その時には全体最適のことも考えながら対応した方が良い。

本を読んでいると、人間の人生は自分で選べるわけではなく、色んな出会いの中で人生が決まっていることがわかる。人間の歴史を見ていると人間の90%以上が自分が一生やりたいことが見つからないまま亡くなっている。
ほとんど人が大阪なおみ選手のような個性は持っていない。迷うのが当たり前。だからやりたいことや好きなことが見つからなくても焦る必要はない。一生をかけて探せばいいだけ。人生は川の流れに流れていくものだと思っている。流れていい。流れ着いた先で一生懸命やってみれば面白いことが見つかるかもしれない。

好きな言葉がある。

Go where nobody has gone, Do what nobody has done.
(誰も行っていない場所へ行け、誰もやらなかったことをやれ。)

カテゴリー: TV